ひとり言
仕事を辞めて、
すぐに異変に気付いた。
ひとり言をいわなくなったのだ。
1日の多くを1週間の大半を
1ヶ月のほとんどを
ひとりで過ごしているのに
ひとり言をまったく言わない。
更衣室でひとりきり、お土産のおまんじゅうを食べて、
「ああ、これおいしいわ」と言って、はっとしたり、
デスクでひとりで作業中、
「しまった」と、口に出してしまって
「すいません、ひとり言です」と、謝ることもあった。
バスの中で、暑いとか寒いとか、
もしや次の域に入ったのかと
(年を取るとひとり言が増えるという)
少し不安になっていた。
ほんの一ヶ月前までのことだ。
今は安心しておく。